なぜ、路上生活をしなければならなかったのか−。4日、東京地裁で初公判を
迎えた男性被告(35)は、23歳の時から家族との絆(きずな)を断ち切り、
各地を転々としながらホームレス生活を続けてきた。
法廷に入ってきた被告は、色のはげかけた茶色のジャンパーに黒のジーンズと
いう格好。短く刈りそろえられた髪の毛には、年のわりに白髪が目立っていた。
起訴状によると、被告は平成19年11月28日、東京都渋谷区内の路上にあ
る花壇に、シンナー730ミリリットルを隠し持っていた。罪名は、毒劇物取締
法違反。罪状認否で被告は起訴事実を認めた。
検察側の冒頭陳述によると、被告は23歳ごろから無職で各地を転々としなが
ら路上生活をしており、事件の2〜3カ月前から、東京・原宿で路上生活を始め
た。シンナーは17歳ころから始めた。19年11月20日ごろ、4リットルの
1斗缶を渋谷センター街の空きビル前で発見。中をのぞくとシンナーのにおいが
したため、500ミリリットルのペットボトル2本に移して持ち帰り、渋谷区内
の路上にある花壇の中に隠して保管していた。
検察官「どこでシンナーを手に入れましたか」
被告「ビルの前に無造作に(1斗缶が)置いてありました」
検察官「誰かが置いているものですか」
被告「ほぼ捨ててる状態で置かれていました」
検察官「シンナーは17歳からやってますね」
被告「はい」
検察官「なかなかやめられない?」
被告「ところどころしかやっていません」
被告の受け答えはしっかりしていたが、用意されたせりふを話しているかのよ
うに固かった。
裁判官は、被告に家族のことを尋ねた。
裁判官「尼崎が小中学校を過ごした地元ですか」
被告「はい」
裁判官「尼崎に帰るつもりは?」
被告「ありません」
裁判官「家族と連絡は?」
被告「とっていません」
裁判官「東京に出てきたことを知らせてない?」
被告「はい」
検察側は罰金30万円を求刑し、即日結審。裁判官は求刑通り罰金30万円の
有罪判決を言い渡した。その上で、未決拘置分の1日が1万円として罰金に算入
されるため、改めて罰金を支払うことはないことを説明した。言い渡し後、裁判
官は「仕事と住むところを見つけて、しっかり生活してください。まだまだ先が
あるのだから、立ち直るようにしてください」と説諭した。
裁判は淡々と進み、約30〜40分で判決まで言い渡された。だが、なぜ被告
が路上生活を続けているのか、なぜ繰り返しシンナーに手を出すのかという疑問
への回答は、なかった。もう一歩深いところに届かず、流れ作業のように終わっ
た裁判に物足りなさを感じた。
裁判官の説諭は、被告の心に響いただろうか。これで社会に戻ることになるが
、今は東京でも厳しい冬の寒さが続く。路上生活を続けてきた理由はわからない
が、こんな季節に路上生活は身にこたえる。被告には1日も早く自立して、更生
の道を歩んでほしい。(末崎光喜)
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