2007年5月29日火曜日

殺人事件詳報:産経新聞引用

酒鬼薔薇以後(1)ネットで増幅する殺人願望

 少年はひとりタクシーを降りた。今月15日午前7時、福島県警会津若松署。
パーカーにジーンズのありふれた服装。手にしたショルダーバッグには、数時間
前に自ら殺害した母親の頭部が入っていた。

 会津若松市で起きた高校3年の男子生徒(17)による母親殺害事件。頭部を
切り落とし、持ち歩いた猟奇的な行動に、だれもがあの事件を思い出したはずだ

 「酒鬼薔薇聖斗」を名乗った少年(24)=事件当時(14)=による神戸市
の児童連続殺傷事件。社会学者の宮台真司さん(48)は当時、「この事件に呼
びかけられたと感じるやつが絶対いる。その一部は近いうちに模倣行動を始める
はずだ」と事件の連鎖を予言した。

 それは、ほどなく現実のものとなる。2年後の平成11年8月、愛知県西尾市
で女子高生が殺害された。逮捕された少年=事件当時(17)=は酒鬼薔薇を尊
敬して事件の記事をスクラップし、自らを「猛末期頽死(もうまつきたいし)」
と呼んでいた。翌12年には愛知県豊川市の夫婦殺傷事件に西鉄高速バス乗っ取
り事件、瀬戸内市の金属バット母親撲殺事件が相次ぐ。いずれも酒鬼薔薇と同学
年の少年による犯行だった。

 宮台さんは指摘する。「酒鬼薔薇の人体をモノのように理解するあり方を誇示
した犯行と、社会への挑戦に満ちた声明文。少年たちは『この社会のルールに従
って生きていかなくてもいい』というメッセージと受け取ってしまったのかもし
れない」


 この10年、少年たちの日常生活に訪れた最大の変化といえば、インターネッ
トとケータイだろう。総務省の統計によると、事件が起きた9年、携帯電話の普
及率は25%。ネットに至ってはわずか9%だったが、17年には67%に達し
た。10代後半から40代に限れば90%を超えている。

 《僕は、僕の欲望を満たすための手始めとして、まず人間がどれ程の攻撃でど
の程度のダメージを受けるものなのかを実験することにしました》《その満足感
は、それまで僕が人を殺した時のことを考えて得られるであろうと思っていた満
足感よりも、もっと素晴らしいものでした》

 酒鬼薔薇の供述調書の一節だ。流出した調書が次から次へとサイトに転載され
ているため、いまやネット上でだれもが読むことができる。事件の詳細な記述だ
けでなく、酒鬼薔薇を賛美し、英雄視しているサイトも少なくない。


 《少年はかねてインターネットに掲載された残酷な死体の映像、あるいは神戸
連続児童殺傷事件、大阪教育大学付属池田小学校事件、米国コロンバイン高校事
件などに触発され、大量殺人願望を抱くようになった》

 17年10月、大阪家裁は、大阪府東大阪市の公園で4歳男児の頭をハンマー
で殴打する事件を起こし、殺人未遂などの非行事実で家裁送致された無職少年(
19)=事件当時(17)=に対する決定でそう指摘した。無職少年は酒鬼薔薇
事件当時は9歳だったが、中学3年のころにネットを通じて"出会った"という
。決定は、さらにこう続けていた。

 《自尊心の傷つきを補うべくアンチヒーローを目指し、有名になりたいと考え
た》

 新潟青陵大の碓井真史教授(47)=社会心理学=は「権威に反発し、悪に対
して一種の憧れを抱く若者は昔からいた。ただ、以前と違うのは、公には口に出
せなくても、匿名のネットで大勢の仲間に出会い、書き込み、思いが増幅してし
まうことだ」という。

 ネットが身近ではなかった時代に、全国を震撼(しんかん)させた酒鬼薔薇聖
斗。16年3月に関東医療少年院を退院した後、どこで何を思い暮らしているの
か。その存在は増幅を続け、今も少年たちに深い影を落としている。

 会津若松市の男子生徒が、母親を殺害したとみられる時間とほぼ時を同じくし
て、次のような書き込みがネット上の掲示板「2ちゃんねる」に現れた。不特定
多数が活用するネットという大海の中で、誰が書いたものかは特定できていない

 《母親を殺してきた》《「なんで…なんで」ってヒーヒー言ってたよクックッ
ク…》


 神戸市立中学校の校門前で土師淳君=当時(11)=の切断された遺体の一部
が発見されてから27日で10年。「酒鬼薔薇以後」を検証する。

(2007/05/27 22:00)

酒鬼薔薇以後(2)「心の闇」の正体は

障害の早期診断と理解必要
 「ぼくの頭の中に浮かんだのは『殺す』ではなく、あくまで『刺す』でした」

 大阪地裁で平成17年9月に開かれた大阪府寝屋川市立中央小の教職員殺傷事
件の初公判。殺人などの罪に問われた当時17歳の少年は、校舎に侵入して教諭
を刺殺したことについて、奇妙な説明を繰り返した。

 漠然と頭に浮かんだ「刺す」という言葉に導かれるまま教諭を刺すことに関心
が集中し、教諭の死という結果にまでは思いが至らなかったというのだ。

 同様に昨年6月、奈良県田原本町の自宅に放火し、母親ら3人を殺害した長男
(17)=事件当時(16)=の行動も不可解だった。長男がもともと殺害しよ
うとしたのは父親だったが、犯行当夜、父が帰宅しないことは母親から聞かされ
て知っていた。殺す相手が不在なのを分かった上で、なぜ放火したのか。

 実は2人には共通点がある。精神鑑定で「広汎性発達障害」と診断されたこと
だ。

 広汎性発達障害は先天的な脳機能障害が原因とされる。相手の感情をうまく読
み取れないための対人関係やコミュニケーションの障害、極端な興味の偏りなど
が表れることが特徴で、自閉症やアスペルガー障害などが含まれる。知的障害を
伴わないことも多く、家族ですら障害に気づかないこともある。

 「刺す」という着想に固執し続けた寝屋川事件に、一度立てた放火計画を現実
にあわせて中止できなかった田原本町事件。いずれもこの障害特有の物事に対す
る強迫的なこだわりが背景にあるという。

                  ◆◇◆

 10年前には知る人の少なかった広汎性発達障害は、今や不可解な少年事件の
背景を探るための一種のキーワードとなった感さえある。現在の国際診断基準が
確立されたのは1992〜94年。国内に浸透するまでにはその後、若干の時間
を要した。きっかけとなったのが、「酒鬼薔薇以後」の少年事件だった。

 平成12年に起きた愛知県豊川市の夫婦殺傷事件で、逮捕された少年=事件当
時(17)=は「人を殺す経験がしてみたかった」と供述。その衝撃的な動機と
ともに、アスペルガー障害と診断されたことが大きく報じられたのだ。

 あいち小児保健医療総合センター心療科部長の杉山登志郎医師は「児童精神科
の専門医なら、以前からこの障害を理解していた。だが、そうした医師の数は先
進諸国と比べ圧倒的に少ない。それが、豊川の事件を機に一般の精神科医の間で
も関心が高まり、ようやく適切な診断が下されるようになってきた」。

 実際、その後、長崎市の男児誘拐殺人事件(15年)、長崎県佐世保市の小6
同級生殺害事件(16年)、静岡県伊豆の国市のタリウム毒殺未遂事件(17年
)など、重大な少年事件で広汎性発達障害と診断されるケースが相次いだ。

                  ◆◇◆

 むろん、この障害を持った少年が犯罪などの反社会的行動をとる傾向が強いわ
けではない。むしろ、いじめや詐欺などの被害に遭うことの方が多いという。

 なのになぜ、重大事件が続発するのか。京都大の十一元三(といち・もとみ)
教授=児童精神医学=は「障害そのものの特質というより、障害に気づかない周
囲と対人関係がうまくいかず、二次的に問題行動を起こしてしまうことがある」
と指摘する。

 たとえば「変わったやつ」と見られて孤立し、被害感情を募らせた結果、突然
、感情が爆発する。あるいは、一つのことへの興味が抑えられなくなって事件を
引き起こした豊川の少年のようなケースもある。

 「まずは早期の適切な診断。そして、周囲の障害への理解。この2つがあれば
、起きずに済んだ事件が多いはずです」

 障害のため感情の理解が不得手な寝屋川事件の少年は、遺族の痛みを頭では理
解できても心では感じられないでいるという。そして、そのことに少年自身も苦
しんでいた。18年10月、少年を懲役12年とした大阪地裁判決は、こう結ば
れている。

 ≪罪を犯した少年を真の意味で更生させ、再犯を起こさせないようにすること
もまた、刑罰の重要な目的である。少年刑務所が適切な処遇を行い、被告人が犯
行の重大さと、被害者及び遺族に与えた苦しみの深さを心の底から感じられるよ
うになることを、強く希望する≫

(2007/05/28 07:48)

--------------------------------------
Easy + Joy + Powerful = Yahoo! Bookmarks x Toolbar
http://pr.mail.yahoo.co.jp/toolbar/

0 件のコメント: