(写真と記事は関係ありません)
「えっ、間が持たない?」
エイズ(後天性免疫不全症候群)予防研究のため、中学・高校生らの性行動に
ついて全国でインタビュー調査を重ねている木原雅子・京都大学大学院医学研究
科准教授(社会疫学)は、西日本に住む高校2年の女子生徒が発した言葉に耳を
疑い、思わず聞き返してしまった。
生徒はトップクラスの成績で、国立大学を受験する予定だという。彼女がこれ
までに性関係を持った男性の数は6人。なぜ相手が次々と変わるのか理由を尋ね
たところ、「間が持たないから」と答えたからだ。
木原准教授は「この言葉を最初に聞いたときの衝撃は、今も忘れられません。
しかし、その後のインタビューで、男子、女子を問わず何度も耳にしました」と
話す。
なぜ間が持たないのか−。インタビューで若者たちは、こう返答した。「テレ
ビドラマのように、スマートに相手とおしゃべりができない」「あの女優さんの
ような雰囲気が醸し出せない」…。思春期の男女はぎこちなくなったり、話題に
困ったりしながら、お互いを理解し交際を深めていくものなのに、それを「間が
持たない」と勘違いしてしまうという。
愛情を確認するために、性関係を持つ。理解を深めたと思うが、それでも間が
持たないからと、もっと自分に合いそうな相手を探す…。
テレビや雑誌、インターネットなどで性関係を急(せ)かすような情報があふ
れ、先輩や友人らの性体験にも左右され、強迫観念や焦りが性衝動へと駆り立て
る面もあるだろう。だが、木原准教授は「親や教師らとの関係が薄れるのに伴い
、性に関する正しい情報やモラルの伝達力が衰え、性行動の乱れを一層助長して
います」と指摘する。
全国高等学校PTA連合会と木原准教授は昨年11月、「人間関係の希薄さが
いじめにつながる」との内容の実態調査の結果を発表した。心から信じられる友
人、真剣に話を聞いてくれる親・教師が「いない」生徒では、「いる」生徒より
、男子では1.5倍、女子では2倍程度、いじめの加害者になっているという実
態が浮かび上がった。
これより1年ほど前。木原准教授は性行動についてのインタビューで、何度と
なく「いじられ」という言葉を耳にした。
「グループインタビューで、参加した4、5人の生徒の中で必ず1人が『こい
つ(この子)、いじられ』と言われ、その子がしゃべろうとすると、他の子が『
こいつは○×』などと遮ってしまう。でも、その子は笑って平気そうに振る舞う
。それがとても不自然に見えました」
この「いじられ」という言葉がきっかけで、高校2年生約6400人を対象に
した実態調査を行うことになった。「いじめ」という罪悪感情を引き起こす直接
的な言葉で質問しても、正確な回答は得られないと考え、「しつこいからかい」
「無視」などの表現で聞いた。
調査の結果、いじめの加害者になった経験があるのは、小・中学時には半分以
上、高校時で男子の約40%、女子の30%弱−。いじめが発生した公立学校は
全学校の19.4%などとした文部科学省の平成17年度調査とはかけ離れてい
る。木原准教授は、こう分析する。
「加害者は暴力的ないじめをしていないので、いじめの感覚がないのでしょう
が、実際には被害者が不愉快な思いをする精神的ないじめは多いということです
」
性行動の乱れといじめ−。一見、別個の現象のように思えるが、その底流にあ
るものを探ると、家庭や学校、地域社会における「人間関係の希薄化」という問
題が、ともに浮かび上がってくる。そしてとりわけ、親子間のそれは、時の経過
とともに問題の深刻度を増している。
西日本にある女子校で、養護教諭として30年以上も生徒たちと関わってきた
女性は、子供と親の関係の変化を指摘する。
「以前は、娘にボーイフレンドから電話がかかると、『なに、長電話してるん
だ。早く切りなさい』と怒り出す父親がいたように、親子の間でそうした(共有
空間の中の)緊張関係がありました」。だが、子供に個室が与えられ、携帯電話
も普及するなど「個」の世界が広がることによって、親は自分の子供の行動や考
えを把握することが、年を重ねるごとに困難になっているという。
そんななかで今、家庭ではどんな対応が必要なのか−。木原准教授は言う。「
温かくて頼れる人間関係の心地よさを感じられるように育ててほしい。それを知
らないと、ほかの人間関係もうまく築けない」
批判が広がる「性行動の乱れ」、潜在・陰湿化する「いじめ」…それらは親子
関係を基本とした「人間関係構築」の習得不全の"象徴的な表れ"であるという
ことを、親は認識したほうがいいということだろう。(篠田丈晴)
■メモ 全国高等学校PTA連合会などが平成16年に行った全国1万人調査で
は、約90%の高校生が携帯電話を使用していた。調査結果によると、性経験率
は、携帯電話を持っている場合は、男子で22%、女子で29%。持っていない
場合は、男子で5%、女子で10%だった。携帯電話と性行動について因果関係
までは断定できないとしているが、携帯の有無によって男子で約4倍、女子で約
3倍もの違いがあった。
(2007/06/01 08:30)
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